午後の机。企画書の画面を見続けている。
案を増やしたいのに、さっきから同じ言葉を少しずつ並べ替えているだけ。
締切を思うと、席を離れるのも少し怖い。休んでいる場合ではない、と肩に力が入る。気づけば、息まで小さくなっている。
そんな午後があります。
考える力が足りない、とは限りません。
「候補を出すこと」と「よい案を選ぶこと」を、同じ場所で同時に進めようとしているのかもしれません。
歩く時間には、答えを決めない
Oppezzo and Schwartz(2014)の実験研究では、座っている条件と比べ、歩いている条件で発散的思考課題の成績が高くなる傾向が報告されています。ただし、実際の仕事で同じ結果が出ることや、仕事の成果が上がることを保証するものではありません。
参考:Give Your Ideas Some Legs: The Positive Effect of Walking on Creative Thinking
最適な答えを選ぶ課題については、同じ傾向が明確に示されたわけではありません。実験で得られた結果を、そのまま日々の仕事へ置き換えるのも難しいところです。
それでも、仕事の区切り方を考える小さなヒントにはなります。
歩く時間は、決める時間ではなく、候補を眺める時間にする。
選ぶのは、席へ戻ってから。
そのくらいの分け方でいいのかもしれません。
5分歩いて、3案を目安にメモする
まず、いま考えている問いを一文にします。
たとえば、「この企画を初めて見る人に、何を入口として示すか」。
その一文だけを持って、安全な場所を5分ほど歩きます。5分は試しやすくするための目安。科学的に確定した最適時間ではありません。
歩いている間にすることは、3つです。
- 息を深くしようとせず、いまの呼吸のまま歩く
- 思いついた案を評価せず、3つまでメモする
- 比較や決定は、席へ戻るまで保留する
ここでは、呼吸も変えようとしません。
歩き始めたとき、息を止めていないか。
案を評価した瞬間、吐く息が途中で切れていないか。
その程度を、ちらりと眺めます。
呼吸までうまくしようとすると、歩いている間にも採点が始まってしまいます。今日は整えなくていい。気づくだけで、まあ十分です。
公園まで行かなくてもいい
同じ研究では、屋内のトレッドミルを歩く条件でも、発散的思考課題の成績変化が報告されています。
ただし、これは限られた条件で行われた実験の結果です。すべての人や日常の仕事で同じ変化が起こるとは限りません。緑のある場所まで出かけなくても試せるかもしれない。そのくらいに受け取るのがよさそうです。
廊下を一周する。
別の階まで行って戻る。
室内で、机から少し離れて歩く。
雨の日や猛暑の午後。夜間、花粉、空気の悪さ、交通の危険が気になるときは、屋内で構いません。歩く速さも、息が苦しくならない程度に。
遠くまで行かなくても。
何も出ない日もある
歩けば、必ずアイデアが出る。そういう方法ではありません。
問いが大きすぎる日もあります。暑さや騒音ばかりが気になる日もあるでしょう。歩くこと自体が負担になる人もいます。
3案に届かなければ、そこで終了です。「今日は候補が出にくい」とわかった。それも、席へ持ち帰れる情報のひとつかもしれません。
痛み、めまい、強い息苦しさなどがあるときは、無理に歩かないでください。必要に応じて医療専門職へ相談を。強い不安や気分の落ち込みに対する治療の代わりとして、この方法だけに頼るものでもありません。
戻ってから、ひとつ選ぶ
今日試すのは、結論を出すための散歩ではありません。
問いを一文だけ持つ。
5分歩く。
評価せず、思いついた案を3つまでメモする。
席へ戻ってから、ひとつ選ぶ。
考えるのをやめるのではなく、役割を一度だけ分けてみる。今日の読後に試すことは、それだけです。
歩いたあとも頭や呼吸の切り替わりにくさが気になるなら、医学的な診断ではない呼吸傾向チェックで、普段の呼吸を振り返る方法もあります。呼吸そのものをもう少し知りたいときは、呼吸法ホームへ。